良い旅を

2019シーズンJ2リーグ第27節 横浜FC vs 水戸

 タダ券を手に入れたので、敵情視察と言い訳をして。いや、南アフリカワールドカップの後にマリノスサポーターになった私には、個人的な敵対意識はほぼないというのが率直なところだけれど。
 横浜FCの主催試合を観るのは2度目。前回はプレーオフ初年度の最終節で、それは2012年のことだから、もう7年近く前ということになる。ちょっと信じがたい。ついでに2012年のJ2について調べたら、町田と松本が昇格してきて22クラブになった初年度だったり、その町田が今のところ唯一のJFL降格の憂き目にあっていたりと隔世の感がある。


 開始直前に現地着。さすがに一銭も落とさないのも悪いかと思いかき氷を買おうとするも、予想以上に待つことになりキックオフから10分近く経ってようやくスタンドへ。バックスタンドの一番アウェイ寄りのゾーンに着席。区画が狭めとはいえアウェイゴール裏はほぼ埋まっていてなかなかの雰囲気。
 横浜FCはいろいろな意味で見覚えのある選手が多い。田代と武田英二郎が30代というのもびっくり。その田代と松井大輔のダブルボランチは違和感がすごい。目の前で積極的に仕掛ける37番をこれが斉藤光毅かあ、と思っていたが、途中で違う選手と気付く。だっていかにも2種登録の選手が着けそうな背番号だし……。その選手、特別指定らしい松尾佑介は背格好も髪型も本物の斉藤光毅(23番)とそっくりで、正体が分かってからもしばしば混乱した。
 前半は横浜FCがほぼ一方的に押していたけれど点は入らず。生で観るイバは相当な迫力だったが、今日はやや身体が重そうな感じも。


 考えてみれば三ッ沢でサッカーを観るのもかなり久しぶりだ。日産の2階も俯瞰でピッチ全体が観られて悪くない、なんて言っているけれど、三ッ沢に来るとやっぱりそれはただの強がりだと思わざるを得ない。今日は客席もかなり埋まっていて非常に良い雰囲気。
 とはいえ「サッカーが観やすい」以外にはあまり良いところがないというのも変わっておらず*1、サッカーにそれほど関心のあるわけではない友人を誘うならやっぱり日産が無難かな、という感じ。日産のことを常々「サッカーが致命的に観にくいこと以外は最高のスタジアム」と言っているが、良いとこ取りで合体してくれんものかな。


 後半はややオープンな展開に。黒川と木村(北九州の頃からなんとなく好き。ジュニアユースから川崎だったことを初めて知った)がボールを触る機会が増えると水戸にもチャンスが増えてくる。水戸が敵陣でセットプレーを取るとゴール前に左SBの志知が入る。それなりに高さはありそうだけれど*2、とはいえ大型というわけでもないSBがそこに入るのは珍しい気がする。空中戦強いのかな。
 横浜FCも磐田時代からなんとなく好きな松浦を投入。相変わらずのドリブルで仕掛けていたが、効果的だったかは微妙。松浦・松尾・斉藤の2列目は素人目にもちょっと無理のある気がした。そしてその3人よりも激しく仕掛けてくる北爪はどこがSBなのかさっぱりわからない。そうこうしているうちに横浜FCのミスから小川航基が決定機を迎えるも枠外。この試合の小川の見せ場はこの場面くらい。水戸がチームとして上手くいっている時間が限られていたとはいえ、ボールにはほとんど絡めていなかった。
 小川については昔から、あくまで「アマチュア(育成年代)レベルの好選手」であってプロのトップレベルではその下馬評ほどには通用しないのでは、という気がしてならず*3、しかし神奈川県出身者だし応援していないわけではないので頑張って欲しい。でもとりあえず「万能型」ではないと思う。ゴール以外はおまけの古典的ストライカーと考えたほうが本人のためなんじゃないか。


 試合終盤、場内のざわつきの理由を探すと背番号46がライン際にいた。投入されて上がるこの日一番の歓声のなか、私は選手交代に対する儀礼として手を叩くだけ。
 2010年に私が応援するクラブとして横浜FCではなくマリノスを選んだ理由の一つには間違いなく中村俊輔の存在があって、しかし今の私の彼に対する関心は、たぶんスタンドを埋める人々のなかでも下から数えたほうが早い。「好きの反対は無関心」という言葉は好きではない(無関心がどうこうというより、そこにある「嫌よ嫌よも好きのうち」的発想がそれこそ嫌なので)けれど、個人的な意識はともかく間違いなくライバル、宿敵として定義されているクラブへの移籍報道に何も感じなかったときは、その言葉にも一理があることを認めざるを得なかった。自分でも本当にびっくりするほど彼に対する関心がなくなってしまった理由は、列挙しようと思えばいろいろと挙げられるし、しかしそのどれも違う気もする。
 後半ATの激しい攻め合いがこのゲームで一番面白かったかもしれない。俊輔にもFKで見せ場はあって、まあ良かったのではないか。結果はスコアレスドローだったが楽しめるゲームだった。


 退場時、「横浜ダービー絶対勝利」という横断幕が張られ、アジテーションがなされているゲート付近をそそくさと通り過ぎる。歩道橋に至っても人で溢れていて、「帰りに困るクラブになっちゃうなんてな」という嬉しそうな会話が聞こえたのが印象的だった。
 新横浜通りから少し入ったところで、公式グッズではないと思われるシャツを着た人が、迎車表示を出したタクシーの窓を殴りながら怒鳴り散らしていた。まあどこにでもそういう人はいるものだけれど……。

*1:私はサッカー場ではただサッカーを観ていれば満足なので、「そういう視点」を意図的にインストールするならば、というところだが

*2:177cmらしい

*3:ちなみに競技は違えど同様のことをもっとも強く思っているのがロッテの小島和哉で、しかし先日先発で好投していたので私の見る目が危うい