良い旅を

2019年8月25日の日記

 アルバイト先を出てJRの最寄り駅まで歩く。駅の近くのラーメン屋で朝食。往々にして特別美味しいわけでもないくせに横浜に比べて高いので東京で家系を食べることはほぼないけれど、ここの店は朝ならサービス料金の500円で、味も悪くないから気に入っている。
 お金を使わず時間をつぶす方法はいろいろあるけれど、屋外で過ごすものはこの時期なるべく避けたくて、かつそれなりに長い時間をつぶしたい、となると最有力手段のひとつは大回り乗車だと思う。ついでに乗りつぶしができればなおいい。品川で横須賀線総武快速線に乗り換えると、ここから錦糸町まで*1は(少なくとも物心がついてからは)未乗区間だ。こんなに近くに乗ったことのない区間があったことも不思議。新橋駅の手前で列車が地下に入っていくと、いつもと違う展開にささやかな高揚感を覚える。緩行線に乗り継ぎ、西船橋武蔵野線に乗り換え。南浦和までが2つ目の未乗区間。緑を基調に家々が散りばめられた郊外にありがちな車窓は、とても楽しく感じられることもあれば、ひどくつまらないときもある。南浦和京浜東北線に乗り換えて南下。


 鶯谷で下車し、「ひだまりの泉 萩の湯」へ。この銭湯の噂は前々から聞いていたけれど、先日秋葉原での駒形友梨さんのリリースイベントの後に訪れた*2系列? の寿湯(上野)が良かったので、いよいよ行ってみる気になった。ビルの1階から4階までが銭湯、という説明から無限に広大な空間をイメージしていたが、そこまでではなく、湯船の種類はむしろ寿湯のほうが多いくらい。よく考えたら何フロアあろうと男湯/女湯はそれぞれ1フロアが限度だろうし、別にビルが巨大だなどとは一言も言っていないのだから当たり前なのだけれど。それでも十分に広々とした空間で、種類が多くない分一つ一つの浴槽が大きく作られている。サウナと水風呂がすぐ隣にあるのも入りやすく、噂に違わぬ良い銭湯だと思った。
 銭湯に入っている間に私に起きた変化が2つあり、1つはサウナで流れていたテレビで「水卜麻美」さんというアナウンサーの名前の読みが「みうらあさみ」だという知識を得たこと。ずっと「みとまみ」だと思っていた……。言われてみれば確かに「うら」と読めるし、カタカナだと思うよりそちらのほうがよほど自然だが。もう1つは川柳を真面目にやってみる気になったことだが、それを思い立ったのは「下町のしっとりとしたカレーパン」と書かれたポスターを見ているとき。5・7・5だからといってそれを川柳だと思っているわけではないし、自分の脳の動きがよく分からない。
 サウナと水風呂を行き来したり、ぬるめの炭酸風呂にだらだらと浸かっていたり、なんだかんだで3時間近く過ごしてしまった。自宅の風呂で異常な長風呂をする習性は抜けたけれど、外の温浴施設に来るとやっぱり長居してしまう。


 ようやく萩の湯を出て、徒歩で北上。地元の祭りの行列と行き当たるなどしながら、本日の歌会の会場、屋上にたどり着く。今年初めての歌会は2週間と少し前だったのに、気づけばもう4回目だ。しかしこれまでの3回はいずれも身内*3とばかりだったのに対して、今日は司会の山階基さん以外は初対面だった。多少はよそいきでやらなきゃな、という歌会は2年ぶりくらい。
 歌会は楽しかった。私の歌には1票も入らなかったけれど。0票だと昔はけっこう気にしていた記憶があるけれど、いつからそうでなくなったのだろう。山階基『風にあたる』も著者から買えたし。空間の雰囲気も好ましくて、また訪れたい。
 

 電車のなかで山階さんと歌集や連作の話をしていると、こういう話をするのも久々だよね、昔はいつもしていたのに、と言われる。2人とも学生でなくなってからもなんだかんだ会う機会はあるけれど、考えてみれば短歌そのものの話はした記憶は確かにない。もっと短歌そのものの話をしていきたい。
 山階さんは私にとっては(タメ口で話しまくっているとはいえ)やっぱり先輩なのだけれど、歌歴は2年、実年齢で言えば1つしか変わらないわけで、ひょっとすると自分が歌集というものを出すこともあるのだろうか、などと考えないこともない。まあ当面はそれどころではないし、渋谷のゆうゆう窓口から出した奨学金の返還猶予届も、もろもろの理由のうちの一つを明らかにしているけれど。家に向かう電車で赤羽尭『復讐、そして栄光』を読了。

*1:東京―品川間は系統上は東海道線と同じだが

*2:自宅と方向が真逆である

*3:早稲田短歌会にお邪魔したときはさすがにもう知らない人も多かったが、まあ元会員でもあるし部外者という気はしない