良い旅を

2022年の振り返り

ぜんぜん記録を付けていないので間違いなく漏れがある。

ケイト・ウィルヘルム『鳥の歌いまは絶え』

 今年読んだ本で一冊だけ挙げるならこれ。三部構成で進展していくディストピアのビジョンも秀逸だけれど、ラストの主要登場人物二人の別れのシーンがあまりにも鮮烈だった。

小泉悠『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』/同『現代ロシアの軍事戦略』

 東欧現代史の研究をするつもりで大学に入った日は遠い昔に思えるけれど、まったく、本当に嬉しくない理由でかの地域に関する本を多く読む一年になってしまった。中でも小泉氏の本は勉強になった。文章も上手いし。
 ロシアの政治・軍事関連書は積んでいるものも多い(正直読んでいてしんどくなることもある)ので、来年も少しずつ崩していくことになるでしょう。願わくは、一刻も早く戦争が終わりますよう。

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』

 読んでいる間の楽しさはSFというよりむしろミステリに感じるそれだったと思う。
 だいたいオチの予想が付いてしまったのは、昔「rewrite(key)を読んだ後に読むべきSF小説10選」的な記事(たしかはてなブログだったはずだがググっても見つからない)で挙げられていたから。

岡田利規『わたしたちに許された特別な時間の終わり』

(いつもこうやって感想を書いておいてほしかった)

鴨志田一青春ブタ野郎』シリーズ

 エンタメ作品で「土地」が描かれること、またそれを読むことには、いわゆる純文学などとはまた違う喜びがあると思った。それが自分にとって親しみのある場所ならば余計に(明らかに私の生まれたそれがモデルの病院が出てきてウケた)。
 しかししばらく新刊が出ていないようなので、あるいはもう出ないのでは……と書こうとして、念のため調べたら最近出たらしい! 今度買いに行こう。

映像

カンテミール・パラーゴフ『戦争と女の顔』

 今年観た映像作品で一番はこれ……だけれど、上に引いた鑑賞直後の感想から、消化しきれていない。観直したいと思う一方で、正直しんどいし怖い。
 他にも『犬は歌わない』『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』『ドンバス』『バビ・ヤール』『ナワリヌイ』など、ロシア/ソ連がらみのドキュメンタリーやその手法を使った作品を多く観た。純粋な劇映画を観るのがしんどかった気もする。

バーバラ・ローデン『WANDA』

 宣伝などから、主人公を「社会に適応できない人間」として描く作品だろうか、と先入観をもって映画館に行った。実際に観てみると、主人公個人についてはまあその通りとしても、対比として「社会」の側になるかと思われた男性のほうもまた、それにしては「社会に適応」できていなさすぎて、単なる図式的な範疇に留まらず、(良い意味で)納得に至らない作品だった。男性のああいった行為を見ると、同じような性自認を持つと思しき人間としては、どうしても怒りや、自己への不安・嫌悪に囚われてしまうけれども。
 あと、ああいった人物として描かれた主人公が、ともあれ運転免許は持っているようで、また車の運転自体はなんとか事故も起こさず行えていた点に、アメリカ(の地方部?)っぽさを感じた。そういった地では、運転もまったくできない、できないと見做される人はどうなるのだろうか。

幾原邦彦輪るピングドラム』(アニメ版)/『RE:cycle of the PENGUINDRUM[後編] 僕は君を愛してる』

 アニメ版を一気観し、その数時間後に劇場版の後編(上映終了直前だった)を観た。
 演出の快楽は勿論のことながら、ストーリーはさんざん言われていることだろうけれどとにかくヤバい親が多すぎる。あの手この手で虐待を描いてきて、劇場の音響で聴くとキツいシーンも多かった。
 一番好きなキャラクターは荻野目苹果です。あと劇場版の新曲めっちゃいい曲でしたね。

斎藤圭一郎『ぼっち・ざ・ろっく!』

 めちゃくちゃ久々にリアルタイムでアニメを追いかけた。たぶんまどマギ以来? 今のところ一番好きな曲は「カラカラ」です(まだアルバム買えてない)。ボーカルの透明感と熱さの塩梅がめっちゃいい……。
 金沢八景、下北沢、江ノ島と、それなりに馴染みがある場所が舞台になっていたのも嬉しかった。
 原作も買った。アニメの範囲より先のほうがもっと好きなので、ぜひ2期もやってほしい。「グルーミーグッドバイ」が聴きたいです。

展覧会とか

  「工藤麻紀子展 花が咲いて存在に気が付くみたいな」(平塚美術館)がとても良かった。身体から余計な力が抜ける感があった。ファンになりました。
 他に印象に残っているのは以下のあたり。

文筆

 発表は『ねむらない樹』9号の渡辺松男特集へ寄稿したエッセイ(「長い・遅い・あやしい」)のみ。短歌作品は発表ゼロで賞にも出せず。
 短歌のメモを見返すと、上半期は歌自体の数は(当者比なら)それなりだが、職場が変わってテレワークになったあたりから激減している。私の場合歌が一番できるのは歩いているときなので、必然ではある。来年はもっと外に出ましょう。